レイライン

ウィルさんは、自称フールくんが突然姿を消したので驚いた。

ひらけゴマってOpen Sesame(オープン セサミ)じゃなかった?胡麻に向かって開けろってのもおかしすぎるけど、え?護摩?アリババじゃなくて空海?

アリババと空海
ウィルさんの頭の中

おいおい、驚いたのはそっちかい?少年が消えたのだぞ。お父ちゃんが石ってあるんかい?

もともと謎っぽい感じだったし、何で消えちゃったのかなんて私が考えたってどうせわかりっこないから考えるのやめよう。

そういうありえないところが、好ましきドライなウィルさんだった。彼女にとっては科学も超常現象もどっちも理解不能な現実という意味で大差はないようだ。

・・・っと、ちょっとまてよ?ところでなぜ私に呪文を言わせたのだ?

そう、彼は自分で呪文を唱えず、ウィルさんに呪文を唱えさせて消えたのだ。自分に関係するところは、ウィルさんもちょっとは気になるらしい。

そういえば・・・聞いたことがある。何だっけ?なんだっけ?イズモレイライン?そうだ!彼は確か『イズモレイライン』と言った。結界とか何とか。『WiLLはイズモレイライン上にある』って、古代史オタクの偏屈が言ってたことじゃなかった?

ちなみにその偏屈とは、これを語っているSaclaのことである。

ただレイライン上にあるってことではなく、レイラインとWiLLには不思議な一致がある・・・って言ってたような?比率がどうのこうの。

ウィルさんはSaclaの話を聞き流していただけで、内容はよく覚えていなかったらしい。以前メールでSaclaが送った画像をウィルさんは探すことにした。

ウィルさん
ウィルさん

あった!これだ

イズモからアイズまでのレイライン

妙高山の隣にある信濃の黒姫山。これは現在長野県に属しているが、同じ名前の山が近隣にもう二つある。青海の黒姫山と、刈羽の黒姫山だ。どっちも新潟県の山だ。

この三つの黒姫山を結んだエリアがほぼ、少年の言っていた『くびき』郡になる。『先代旧事本紀』によれば、崇神天皇の頃に黒姫山エリアは大和朝廷に組み込まれているようだ。この頃地名はすでに『くびき』になっていたのではないさろうか。そしてこのエリアの南のはじっこに妙高山、つまり『須弥山』がある。

青海と刈羽の黒姫山頂を結ぶ西の延長線上に出雲大社があり、東の延長線上に会津磐梯山がある。会津の手前にはもうひとつの黒姫山があり、しっかりレイラインをつくっている。これは守門岳の外輪山だ。

『古事記』によれば、大国主であるヤチホコの神が長々とした恋歌を贈ってコシのヌナカワヒメと婚姻したらしいので、コシがイズモの勢力圏に取り込まれたということは容易に推測できる。つまりこのレイラインは、そのイズモ勢力が会津までつながっていた、ということを示すのだろう。

出雲大社から磐梯山まで一直線に結ばれていて、その沿線上にズーズー弁が分布?『砂の器』って・・・読んだっけかなぁ?テレビで観た気がするけど、確か島根県もズーズー弁使うんだよね。

松本清張の『砂の器』は、ズーズー弁は東北人、という先入観を覆したサスペンス小説だ。東北と出雲は言葉が近い。それは現実の話らしいのだけど、何で遠く離れた出雲と東北の方言が似ているのか?という謎は常識的な推測で語られているにすぎない。

レイラインなんて別に珍しい話ではないのよね。そんなものどこにでもあるし、古代の測量がやたら正確だってことに驚くだけのことなんだけど、それよりイズモレイラインのつくる比率とかって、どういうことだっけ?

そう言ってウィルさんは、次の画像をクリックしてみた。

比率

地元の伝説によれば、クロヒメというのは、古事記に登場するヌナカワヒメの母親であるらしい。つまり黒姫山のクロヒメさまはヌナカワヒメさま先代のコシの女王ということになる。シナノの王さまと結婚して生まれたのがヌナカワヒメだという説があるが、その本拠地は青海地方であったというのが有力だ。

ちなみに『ヌナカワ』というのは『(ぎょく)の川』という意味らしい。文字通り、青海地方にはヒスイつまり硬玉(ジェイダイト)を山中から運んでくる川が流れている。

女王さまの本拠は青海黒姫山付近で間違いないのだろう。

出雲大社から青海黒姫山までの距離を1とすると、磐梯山までの比率は1.44。青海黒姫山つまりくびきの西端からWiLL編集室まで1とすると、くびきの東端にある刈羽黒姫山までが1.44。同じ数値だけど、これってただの偶然じゃないの?あ、でもちょっとまって、青海から守門を1とした場合の会津までの比率が1.62って、これはもしや黄金比?そういえば、1.44は白銀比にかなり近いかも。

白銀比は1対2の平方数なので1.414・・・だけど、7/5つまり1.4を白銀比として扱う場合がある。その誤差が許されるなら、1.44を白銀比の範疇とみてもよいのではないだろうか?1.62はほぼ黄金比だ。

白銀比は大和比とも呼ばれ、日本古来の建築物に見られる美の比率である。黄金比は、どちらかというと西洋的な造形物や自然界に多く見られる美の比率。共通しているのは、どちらも『自己相似が永遠に回り続ける神秘の比率』であるということだ。

白銀比と黄金比
自己相似の永遠回帰

出雲・青海・会津の比率関係がそのまんま、青海・WiLL編集室・刈羽の比率。しかもその比率は自己相似を繰り返す神秘の比率。イズモの中のコシと同じ位置関係になるくびきの中のWiLL編集室には、何か秘密があるってことなのかな?

ウィルさんは、もう一枚の画像をクリックしてみた。

くびきの黒姫三角を出雲大社を基点にして磐梯山まで相似形で拡大していくと、その南端に熊野がくる。そして熊野と会津を結ぶライン上に諏訪が位置することになる。

『諏訪』はオオクニヌシの子が逃げ込んだ場所だけど、確か『熊野』も出雲と関係が深かったはず。ってことは、ここまでがイズモの範疇だったってこと?やだ、くびきと昔のイズモ世界はまったくの相似形ってことだとしたら?くびきの中の私ウィルはコシの女王を意味するってことになる?そんなばかげた話あるのかしら?それにしても何?この将軍って。

イズモに国譲りを迫った(いかづち)の神さまは、島根県じゃなくて、明らかに若狭湾から入り込んで大国主を脅しているのだから、古いイズモ世界は畿内を中心にして栄えていたのかもしれない。だとしたら、ジンムに降ったあの本流こそがイズモ討伐の首謀者であり、イズモ民族を島根と東北、そして諏訪に追いやったとみることができるのかもしれない。国譲りしたはずのイズモが神話から消えてしまった謎はそれでこそ納得できるというものである。

このことは、ウィルさんやこの先の物語とどう関係してくるのか、記憶の隅っこに残しておいて欲しいことなのだ。

つづく

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